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税理士所長コラム

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2009/10/31

モノを売る時代が終わる

マス・カスタマイゼーションはどこまで進化するのか

私は、この命題に対して、「限界」という答えをもっている。
すなわち、ここ近年、この手法で業績を伸ばしてきたビジネスは新たな展開をせざるを得ないという意味だ。

これまで、ITは主に「規模の経済性」を実現するための手段として利用されてきた感が強い。平均的顧客をミドルレンジにとり、画一化された商品やサービスをマニュアルどおりに提供し、大量生産・コストダウンを図りながら企業は多額の利益を得てきた。

しかし、大量生産された画一的商品は、価格が安いことを引き換え条件に顧客に少しずつ”諦め”を受け入れてもらうことでもある。コストが高ければなかなか商品は売れない。そこで、編み出された手法がマス・カスタマイゼーションである。

本来、画一的な生産や販売を大量に行う「規模の経済性」に少し改良を加えて、製造プロセスで顧客が選択できる”組み合わせ”を用意し、もう一段きめ細やかな対応を可能にしたのである。
これにより、コストを犠牲にせず、顧客満足を製品レベルでなんとか維持してきたといえるだろう。

製品レベルでの顧客満足は維持が難しい

ヒトの欲求は限りない。しかし、マズローの欲求5段階説によれば、人間の欲求は5つの段階(生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求)に分解でき、低次の欲求が満たされると、より高次の欲求へと意識が向く。最終的には、「自己実現の欲求」に向かうとされている。

社会は人で構成されている。マーケットもこの5段階欲求で成長してきたとすれば、顧客の欲求は「自己実現の欲求」を目指すことになる。そして、現在のマーケットは、まさにこの5段階目である最終局面に突入しようとしているのではないだろうか。

この変化に対応しようとする場合、「仕組み」や「効率化」「マニュアル化」といったこれまでの薄っぺらな準備では対応できないことをよく認識しておきたい。

一つの例を挙げてみよう。

冒頭でのIT技術の利用方法である。これまでは、ITによって「規模の経済性」が幅をきかせてきた。しかし、「自己実現の欲求」という成熟した市場下では、マスの発想は全く通用しない。今までのように、一定の算式で計算された広告宣伝効果も見込めない。

これからは、ITに含まれているコミュニケーションという概念を重視していかなければならないだろう。WEBサイトも、コンテンツそのものの充実というテーマで対応するのではなく、顧客がその商品やサービスを手にした場合の現実的な日常をWEBサイト内で想像させ、あるいは疑似的に体験させるような工夫が必要になる。企業もその商品の一ユーザーとしての立場からひとり言のように語る姿勢も、新しい価値を伝える意味で重要である。

企業が提供すべきものは、商品やサービスそのものではなく、これまで培ってきた「経験的価値」なのであり、これまでのような「単なる詳しい情報」では、顧客はアプローチすることができない。それゆえ、コミュニケーションを軽視することはできないのである。

成熟市場では新しい価値で対応するしかない

現在の市場環境を前提にすれば、今後も商品レベルで顧客満足に対応することは無理である。サービスの提供そのものでも同じでことが言える。商品やサービスがここまで成熟してくると、たとえマス・カスタマイゼーションで対応しようとしても、顧客にとってはほんの少しお得感があるくらいの捉えられ方しかされず、値段を極限まで下げても、たまに衝動買い需要をつかむことができるくらいのことであろう。

では、人間の最終段階である「自己実現の欲求」に応えるためには、どのようなことが必要だろうか。これは私見だが、人は常に自分の居場所を探しながら生きていると思うのである。都会に出向くもの、地方へ帰っていくもの、直接的には色々理由はあるかと思うが、「自分の居場所を求めて」という心理で説明がつく。これが「自己実現の欲求」へと通ずることに気がつけば、企業として何をすればよいかが次々と発想できる。反対に、経営者の思考レベルによっては全く手の出せなくなる世界でもある。

「自己実現の欲求」に応えるための新しい価値とは、「顧客とともに商品を作り上げる」「顧客と互いに学習関係を持つ」ということなのである。顧客との継続的なコミュニケーションが企業にとってのエンジンとなることを忘れてはならない。

過疎地域では都市部の若者を呼び戻し、定住させようとする動きがある。
これを実現しようと、地元のPRのなかで「空気がきれいだ」「住みやす」などと言っても、うまく誘導できない。「欲しいものは商品そのものではない」という原理がここでも働いているのである。「自己実現のため」の環境を整えること、そして、受け入れるための十分な用意があることをコミュニケーションを介して自然に理解してもらうことが成功の秘訣なのではないだろうか。

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